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『ささやかだけれど、役に立つこと』レイモンド・カーヴァー 村上春樹訳(『大聖堂』所収)
『頼むから静かにしてくれ』がデビュー時の作品を集めたものだったのに比べて、『大聖堂』に収められている諸編は村上春樹の解説によれば、成熟期の作品であるとのことだ。『ささやかだけれど、役に立つこと』をまず読んだけれど、恥ずかしいことだが泣けてきてしまった。すごい。私の能力ではあらすじを拾えないので、村上春樹の解題から引用する。
 平和な家庭をおそう突然の悲劇。誕生日を迎えようとしていた子供が交通事故にあって意識不明になってしまう。両親のショックと不安。前半は子供の死で終わる。(中略)子供を失った夫婦は不気味な電話をかけてきたパン屋を追い詰めていく。まるで死んだ子供の魂を追って暗い冥界に彷徨いこむように、夜更けのパン屋へと彼らは車を走らせる。そこは世界の果てであり、愛の辺境である。そこでは愛が失われ、損なわれている。パン屋は人を愛することをやめ、人に愛されることをやめている。夫婦の方は愛をおしみなく与えたにもかかわらず、その対象は理不尽に唐突に抹殺されてしまった。パン屋にできることは二人のためにパンを焼くことだけだ。それは世界のはしっこにあって「ささやかだけれど、役に立つこと(a small,good thing)なのだ。どれほど役に立つのかは誰にもわからない。でも彼らはそれに変わるなにものも持たないのだ。(p420)
『頼むから静かにしてくれ』が余白が多すぎて私自身の処理に困るというようなことを書いた。『ささやかだけれど、役に立つこと』でも余白はある。しかし作者として小説に対してきちんと責任を取っている、という印象を受ける。作品を放り出すだけではなく、きちんといけるところまで書こうという意志があり、私もそれを受け止めることができる。受け止めすぎてたいへんだよ。とにかくこの小説を読んでカーヴァーのすごさをやっと分かった。すごい。
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2007年12月16日 | Comment:0 | TrackBack:0 | | | Top↑ |
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