『海に住む少女』を読んだ

『海に住む少女』シュペルヴィエル(光文社古典新訳文庫)
 シュペルヴィエルの名前を知ったのは大岡信と谷川俊太郎の『対談現代詩入門』(思潮社)の中で、若い頃の両詩人が影響を受けた、というのを読んだからだった。
 詩集を手に入れようと思ったのだけれど、絶版で、古本もとても高いから読めないと思っていたが、この短編小説集が新訳文庫で出たので読むことにした。
 訳者が「苦しまぎれに「フランス版宮沢賢治」という言葉を使ったことがある」とあとがきで記しているが、たしかに宮沢賢治に通じるものがある。
 動物が擬人的に書かれる手法、宇宙的、幻想的、宗教的な感覚。
『飼葉桶を囲む牛とロバ』は、イエス誕生の際のエピソード。イエスを守り続けて、そのまま死んでしまう牛の悲しくて美しい話。この一篇だけでも読んだ甲斐があった。

 小説を引用しづらいので、あとがきに載っていた『動き』という詩を引用しておく。
 だいたいこんな感じの小説です。
 詩集を図書館で借りようかな。


動き

ふりかえった馬は これまで
誰も見たことのないものを見た
そして、再び草を食べ始めた
ユーカリの木のしたで

それは人でも樹木でもなく
牝馬でもない
木の葉をゆらしていた風の
なごりでもない

それは 二万世紀も前に
別の馬が見たもの
今日と同じこの時刻に
とつぜん振り向いて目にしたもの

人も馬も 魚も虫も このさき誰も
この大地がいつの日か
腕もない 足もない 頭もない
彫像の残骸に成り果てるそのときまで
もう二度と見ることのないもの


海に住む少女 (光文社古典新訳文庫)海に住む少女 (光文社古典新訳文庫)
(2006/10/12)
シュペルヴィエル

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