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『サブリミナル・インパクト――情動と潜在認知の現代』下条信輔(ちくま新書)
 知覚心理学者である下条さんの本は以前『サブリミナル・マインド』(中公新書)を読んだことがあり、刺激を受けた。
 例によって詳しいことは忘れちゃったのだけれど、逆さメガネ(天地が逆に映るメガネ)をずっとつけていると最初はまともに歩けないのに、そのうち慣れてふつうに歩けるようになる、というエピソードは覚えている。
 人の知覚や認識なんて当てにならないよ、ということだろうな、と勝手に整理して覚えているわけだが。
 この本では人間の認知系(知)と情動系(情)にそれぞれ顕在的な部分と潜在的な部分があるけれど、顕在的な認知系により人間は行動しているのではなく、潜在的な認知系、情動系により行動させられているのではないか、ということを説明している(と思う)。 たとえば何かしらの商品を買うに当たって、じぶんが合理的な判断で購入している、と私たちは思っているけれど、それは後付けに過ぎず、実は氾濫するコマーシャルや広告などによって潜在的に親しみのあるものを選んでいるだけに過ぎないのだ、と様々な実験を用いて説明する。
 私はいつもオリジナリティやら個性やらというものに対してひじょうに疑念を持っていて、ことさらに個性的ぶる人を見ると嫌悪してしまうのだが、この本を読んだ理由はたぶんそんな「個性」に対する反発という側面が強い。
 現代社会において私たちの情動や潜在認知への「攻撃」について説明したあと、しかし下条さんは唐突に最終章で独創性について語る。
 独創性は閉ざされた個人の心から生まれるのではなく、情動・潜在認知が社会と関わってゆたかになり、そして新たに組織化されて見いだされるときに生まれる、と言っている(たぶん)。
 
 この最終章では、本全体で素描してきたひとつの見方の応用問題を解くと同時に、テーマ全体の変奏曲を、最後に奏でる結果となりました。現代社会と現代人のこころの分析に終始したこの本を、それによってよりポジティヴな未来形で終わらせることにもなる。善悪は別にして、いずれにせよやってくるものをより正確に予測し、備えることにもなる。
 たぶん潜在認知のどこかで(!)、私はそう考えていたのかも知れません。(P297)
 
 いずれにせよ、かなりはしょって読んでしまった。
 もう少し下条さんの本を集中して読まないときちんと把握できないかも。
 講談社現代新書から『「意識」とは何だろうか―脳の来歴、知覚の錯誤』という本が出ているので、それもできたら近いうちに読んでみよう。
サブリミナル・インパクト―情動と潜在認知の現代 (ちくま新書)サブリミナル・インパクト―情動と潜在認知の現代 (ちくま新書)
(2008/12)
下條 信輔

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2008年12月15日 | Comment:0 | TrackBack:1 | | | Top↑ |
『夫婦善哉』織田作之助(新潮文庫)
 織田作之助は今までまったく読む機会がなかった。
 なんとなく坂口安吾と同じ系統でちょい下くらいのイメージを勝手に作っていたのだ。 無頼派、というひとくくり。 
 読まず嫌いはよくない。
 面白いなあ。
 素晴らしい短篇集。
 おしなべて文章のスピードが速い。
『夫婦善哉』なんかはまるで『族長の秋』くらい速い。
 ただ、小説としては『木の都』や『世相』、『競馬』といったものがうまくておもしろい。
『木の都』や『世相』は私小説風に作り上げたかっこいい短篇。
『競馬』は嫉妬とギャンブルという無関係にみえるものをうまくつなげている。
 競馬好きにはほろりと来る。
 オダサクをもう少し読みたいな。
夫婦善哉 (新潮文庫)夫婦善哉 (新潮文庫)
(1974/03)
織田 作之助

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2008年12月12日 | Comment:0 | TrackBack:0 | | | Top↑ |
『寂聴と磨く「源氏力」全五十四帖一気読み』「百万人の源氏物語」委員会 編(集英社新書)
 源氏物語はいつか読みたいと思って、最初は谷崎訳を購入したが挫折。
 次に与謝野晶子訳を購入したがやはりだめ。
 あらすじ本的なものを何冊か読んで準備したこともあった。
 橋本治『窯変 源氏物語』もとりあえず買いそろえているのではあるが、これは手つかず。
 今回、『寂聴と磨く・・・』は軽い気持ちで読むことにした。
 ぱらぱらめくっていると瀬戸内寂聴がインタビューで答えていたり、けっこうらくに読めそうな本だったから。
 そもそもラジオ番組をもとに作られた本で、瀬戸内寂聴に近藤サトがインタビューする部分と、国文学資料研究館長の伊井春樹氏が解説する部分に分かれている。
 読んでみると伊井春樹氏のあらすじ、解説の部分が読みやすく、源氏物語全体の「物語」がわかりやすく把握できて、はじめて源氏物語の全体像がわかったように思う。
 腑分けのような解説ではなく、あくまでも物語に寄り添った語り口で、源氏物語を読み終わったような勘違いに陥るほどだ。
 長編小説を読み終わったあとの感動に近いものがあった。
 そろそろ源氏物語が読めるだろうか。
寂聴と磨く「源氏力」全五十四帖一気読み! (集英社新書 470F) (集英社新書)寂聴と磨く「源氏力」全五十四帖一気読み! (集英社新書 470F) (集英社新書)
(2008/11/14)
「百万人の源氏物語」委員会

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2008年12月10日 | Comment:0 | TrackBack:0 | | | Top↑ |
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